起世因本経巻第一(足利尊氏願経)

文和3年〈1354〉の正月、足利尊氏〈あしかがたかうじ・1305-58〉は、後醍醐天皇〈ごだいごてんのう・1288-1339〉ならびに尊氏の父母、さらには敵味方を問わず、元弘の乱以後の戦乱で亡くなった人々の霊を慰め、天下泰平と民衆の安穏を祈願して一切経書写供養を発企した。それが「足利尊氏願経」と呼ばれるものである。その発願の趣旨を木版刷りして巻末に付している。文4行のものと5行のものがあり、本帖は5行の発願文が付属する。このうち、「尊氏」の署名のみが尊氏の自筆である。経典そのものの書写には、京都・奈良・鎌倉の主要寺院の諸僧が参集され、ほぼ1年を経過した同年12月23日に、京都・等持院において供養が行われた。この一切経5000余巻はそのまま等持院に奉納される予定であったが、滋賀・園城寺(三井寺)の僧侶たちの要請でその日のうちに園城寺に移納された。が、今日同寺に現存するのは592帖のみで、寺外に流出したもののうち、根津美術館の36帖、東京国立博物館の8帖などが知られる。装丁は折本形式。折本を表紙全体で掩う帙表紙の形をとっている。転読供養(経全部を読まないで、経題・訳者名・経文の巻頭・中・巻末など要所数行を略読すること)の儀式用に考案された形である。閉じると一帖の形をなすが、背が糊付けされていないために、表紙を持ち上げると連続した本紙がひらひらと翻り、つむじかぜがぐるぐると回っているさまに似ているところから「旋風装(せんぷうそう)」とも呼ばれる。本帖は『起世因本経』(全10巻)の巻頭、巻第一。大覚寺に住していた比丘性玄の書写になるもので、校正も同人による。
オブジェクトの概要
ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Sutra Manuscript Invoked by Ashikaga Takauji
物理的特性
- 重量と数量
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員数 1帖
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