祖霊像(ウリ)

- 人物
-
収集者小嶺磯吉
- 場所
-
収集候補地1 ビスマルク諸島 ニューアイルランド島 中部マダック地域
- 寸法
- L-cm × W-cm × H-cm
- 材質・技法・形状
- 木(Alstonia scholaris)、膠着材(パリナリウムナッツ+泥)、黒色顔料(木炭)、白色顔料(石灰)、茶色顔料(材料不明)、巻貝の蓋(リュウテンサザエ科か)、植物製繊維
- コレクション
- メラネシア民族資料
- 所管
- 文学部 民族学考古学専攻
顎鬚を蓄えた大顔や頭上の髪飾り、どっしりと踏ん張る短脚は、間違いなく「ウリ」と呼ばれた祖霊像の特徴である。キョウチクトウ科の高木から彫り出された一木造で、タカラガイの殻とサザエの蓋で眼球が表現され、赤土(赤)・木炭(黒)・石灰(白)とパリナリウムの樹脂を混ぜ合わせた3種類の顔料で彩色されている。突き出るペニスとふくよかな胸が示す両性具有性は、戦場での無慈悲なまでの力強さと人々を養い立てる甲斐性を象徴するという。どちらも首長に不可欠な資質だったようだが、詳細は不明である。ウリにかかわる知識は、マダックの山深い内陸で伝えられてきたが、植民地化の過程で村々が廃れてしまったからである。1904-5年に東海岸のラマサンで行われた首長の葬送儀礼(マランガン)に際して、名を残した首長たちを象徴するように、10体のウリ像が内陸の民によって運び込まれたことが僅かに知られている。そのなかには、慶應大所蔵の3体にそれぞれ似たウリ像が含まれていた。
「文学部125年記念企画展 語り出す南洋の造形:慶應大所蔵・小嶺磯吉コレクション」展示冊子(pp.4-5)より
©山口徹
慶應大コレクションに含まれる3体のウリ像のうちの1体。いずれのウリ像も全て腕を上に伸ばす。これはニューアイルランドの彫像に散見される特徴であり、旧来の葬送儀礼における遺体の安置状況を模した姿であると考えられる。当資料は他の2例に比して広がる笠状の肋骨が目を引く。顎や肘から下方に伸長する支柱には三角形を配列させた装飾文様が、また下腹部には頭部と腕のみが表現された副像が表現される。腕や脚には輪状の表現は装飾品を模したものと思われる。形態的特徴から、Kramer, A. によってlembankakat lavatlasとの現地名が採集されたスタイルに属すると思われる。
©臺浩亮
どっしりした短脚、凛々しい大顔、そして両性具有の形象は正にニューアイルランド島のウリ像にちがいない。亡くなった偉大な首長の葬送儀礼に周りの村々から運ばれたウリたちが勢揃いし、13ヵ月にわたる儀式を経て新作のウリがお披露目された。独領ニューギニアの植民地政策のなかで、その慣習も廃れてしまったが、西洋に運ばれたウリ像は20世紀初頭の若き芸術家たちを魅了し、ドイツ表現主義のエミール・ノルデの作品に描かれ、シュルレアリズムの旗手アンドレ・ブルトンの書斎机に立ち、彼の詩のなかに詠い込まれた。戦後の日本でも、国立近代美術館の《現代の眼-原始芸術》展(1960年開催)に義塾所蔵のウリ像が登場した。その時のイメージの流用と思われるが、かつて奈良にあった遊園地にはモルタル製のウリもどきが立っていた。異形の元々の意味は、もはや類推の外に知りようがない。それでも、降り立った先々で観る者の感覚を揺さぶり、何ものかを想起させながら、新しい意味をその身に纏ってきたのである。ウリ像は今もまだ、その旅の途上にある。
©山口徹
オブジェクトの概要
ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
Keio Object Hub では、データのオープン化を進めるだけではなく、オープン・データを活用してどのような体験がデザインできるか、さまざまな試みを行っています。
オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(その他)
-
現地名 Uli
- 分類
-
資料分類 彫像 Figure地域 メラネシア Melanesia
物理的特性
- 材質・技法・形状
-
材質 木(Alstonia scholaris)、膠着材(パリナリウムナッツ+泥)、黒色顔料(木炭)、白色顔料(石灰)、茶色顔料(材料不明)、巻貝の蓋(リュウテンサザエ科か)、植物製繊維
参考文献
Keio Object Hubでは、試験的な取り組みとして、AI(機械学習)を用いてキーワードを付与し、検索やフィルタリングに使用しています(AIサジェスト)。
初期ローンチ時は、Google Cloud の Vision APIを利用して、各オブジェクトの画像を解析し、自動的にキーワードを付与しています。