石山切(伊勢集)
- 人物
-
作者伝藤原公任筆
- 年代
-
制作年 平安時代後期(12世紀)
- タイトル
- イシヤマギレ(イセシュウ)
- 寸法
- 20.3×16.0
- 材質・技法・形状
- 紙本墨書
- コレクション
- センチュリー赤尾コレクション
- 所管
- 斯道文庫 キャンパス 三田
(よとさだむことこそみにはかたくとも)ゆめばかりには猶もみえなむかくれぬのそこのしたくさみがくれてしられぬこひはくるしかりけりかへしみがくれてかくるばかりのしたくさをながゝらじともおもほゆるかなにほふかの君おもほゆるはなゝればをるしづくにもそでぞぬれぬるむめの花ちるてふなへにはるさめの(ふりいでつつなくうぐひすのこゑ)
これは、「本願寺三十六人家集」の中の「伊勢集」の断簡。「本願寺三十六人家集」は、天永3年〈1112〉ごろ、白河法皇〈しらかわほうおう・1053-1129〉のもと、当時の能書20人が筆を競って調進したといわれる粘葉装の冊子本で、全39冊(「人麿集」「貫之集」「能宣集」の上下巻を含む)。昭和4年〈1929〉切断の際に、益田孝〈ますだたかし=鈍翁・1848-1938〉によって「石山切」と命名された。後奈良天皇〈ごならてんのう・1496-1557〉が本願寺第10世・証如〈しょうにょ・1516-54〉に「三十六人家集」を下賜した当時(天文18年〈1549〉正月)、本願寺が大坂の石山(いまの大阪城のあたり)にあったことにちなむ。「伊勢集」は三十六歌仙の一人、伊勢〈いせ・生没年未詳。伊勢守藤原継蔭(ふじわらのつぐかげ)の娘〉の家集で、とくにこの本願寺本伊勢集の和歌483首は異本系であり、国文学における本文研究にも貴重な存在である。藤原公任〈ふじわらのきんとう・966-1041〉筆と伝えられるが、実のところ筆者は不明。一紙ごとに華麗な趣向が凝らされる「石山切」の中でも、この断簡は、梅花・松枝や蝶鳥の小さなモチーフを金銀泥によって微細な絵筆で描いた優雅な装飾下絵がほどこされており、仮名の連綿と見事な調和美を見せている。12世紀初めの書写である。
日本で最も豪華な冊子本が国宝「西本願寺本三十六人集」であることに誰も異存はないであろう。天永三年(1112)の白河法皇六十賀の折の製作と推定される、至高の装飾紙に時の能筆達が腕を揮った美術品的な書物である。その内の「貫之集下」と「伊勢集」が1929年に分割され、本願寺の故地に因んで「石山切」の名が与えられた。少なからぬ古筆切の中でも屈指の優品で、特に装飾性の高いものは重要文化財に指定されている。
本断簡は平安女流歌人を代表する伊勢(875?–938以降)の家集のもので、胡粉を塗った具引地に銀泥で細かな鳥や紅葉を描いた下絵を有している。「貫之集下」が藤原定信(1088–?)筆と判明するのに対し、「伊勢集」の筆者は特定されていないが、一筆で何文字も続けた連綿が、平安時代らしい優美さを示している。「西本願寺本三十六人集」は糊を多用する粘葉装で仕立てられており、この断簡でも右端に糊代部分を確認することができる。(佐々木)
文字景 —— センチュリー赤尾コレクションの名品にみる文と象」展(2021.4 慶應義塾ミュージアム・コモンズ)図録 掲載
オブジェクトの概要
ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Collected Poems of Lady Ise (Ishiyama Fragment)
物理的特性
- 重量と数量
-
員数 1幅
- 付属品
- 二重箱/読み下し/太巻
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