アンドレアス・ヴェサリウス『人体の構造について(ファブリカ)』(バーゼル、1543年)
観察装置としての絵入りイニシャル
パドヴァ大学で医学と解剖学を講じていたアンドレアス・ヴェサリウス(1514–64)は、人文主義的医学と観察に基づく解剖学を統合させ、解剖学・生理学の先駆的な本書を著した。ガレノスやヒポクラテスなどの古代医学の影響が残る中で、本書の出版は画期的であった。
序文冒頭の大きな装飾イニシャルQ(図1)をよく見ると、生体解剖の様子が描き込まれている。解剖台に豚が鎖で縛り付けられ、裸の幼児たち(putti?)が周囲を囲んでいる。またメスを入れる人物やその様子を見学する者、本を手にする者もいる。印刷技術の発展に伴い、絵入りイニシャルも複雑なデザインが可能となったが、本文の内容とこれほど緊密に結びついた例も珍しい。公開解剖が描かれた扉絵(図2)や、人体の構造を緻密に写し取った解剖図のように、冒頭のイニシャルQも読者に観察を促す。ヴェサリウスは生体解剖の意義を説く第7書において、犬よりも豚の方が(命が尽きる直前まで鳴きわめくので!)観察に適することを詳述し、イニシャルQと同様の豚の絵を付している(Lanska, pp. 225–56)。またこのイニシャル以外にも、解剖関連の絵が入った大型イニシャルや、小さめの絵入りイニシャルが随所に用いられている。それらのデザインは、骨格図の作画も担当したティツイアーノ工房のJan Stephan van Calcar(c. 1499–1546)とされている(Lambert; Francis, p. 231)。 (ST)
2o: [*6], A–Z6, a–l6, m7, n–o6, p4, q–z6, Aa–Ll6, Mm8; plates [2]. 415 × 280 mm. VD16 V910; USTC 606035.
オブジェクトの概要
ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
Keio Object Hub では、データのオープン化を進めるだけではなく、オープン・データを活用してどのような体験がデザインできるか、さまざまな試みを行っています。
オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Andreas Vesalius. De humani corporis fabrica. Basel, [ex officina Johann Oporinus, 1543].
Keio Object Hubでは、試験的な取り組みとして、AI(機械学習)を用いてキーワードを付与し、検索やフィルタリングに使用しています(AIサジェスト)。
初期ローンチ時は、Google Cloud の Vision APIを利用して、各オブジェクトの画像を解析し、自動的にキーワードを付与しています。