大般若経巻第七〇

『大般若経』(大般若波羅蜜多経)は、「般若波羅蜜」(完成された最高の智慧)を説く多くの般若経典群の総称で、全600巻から成る。あらゆる仏典中で最大量の経典。唐の玄奘の訳。『法華経』とおなじく写経の功徳を説く。この経典を供養するものは諸の神によって常に護られると説くことから、わが国においても、奈良時代以後、平安・鎌倉時代と、永い間にわたって、しばしば書写されている。一人でこの『大般若経』一部600巻を完写する功徳を遂げた者もあった。これは、巻末の奥書により、文永2年〈1265〉9月3日、僧・快円筆によるものと知る。もとは『大般若経』1部600巻の1巻であった。これ以外にも、「文永二年〈1265〉九月三日酉刻書写畢執筆快円」(巻第七十)「文永五年正月三日午刻書写了快円」(巻第三四五)「文永七年七月廿五日未刻奉書写了快円」(巻第五五三)の奥書をもつ『大般若経』の写経が伝存する。さらに、これらに加えてこの巻第一二六の奥書によると、「文永2年〈1265〉3月2日に書き始めた。が、翌文永3年2月16日に風痾(風邪)にかかり中断、完全回復に至らないが、同年3月2日から、初志を貫き、病床の身ながら再開した次第。しかし、文字は散々、以前の元気なころの書に及びもつかないものになってしまった」との識語を残す。よって、この一連の写経が、快円が文永2年から同7年にかけて、一人で『大般若経』全600巻書写の善根を尽くした一筆大般若経であったことが判明する。重量感のある整然とした書風は、宋版経の影響を受けたもの。鎌倉時代における『大般若経』信仰の実態を示す貴重な写経である。同じ快円筆で同仕立ての遺品で、「文永五年正月三日午刻書写了快円」「文永七年七月廿五日未刻奉書写了快円」の奥書をもつ『大般若経』の写経が伝存する。すなわち、これらは、僧・快円が文永年間ころに一人で『大般若経』全600巻書写の善根を尽くした一筆大般若経であったことが明らかである。さらに、巻頭から等間隔に折り目が見えるところから、伝来途次において折本に改装されていたことが分かる。転読供養(全部を読まないで、経題・訳者名・経文の巻頭・中・巻末など要所数行を略読すること)の儀式用に用意されたものである。閉じると一帖の形をなすが、背が糊付けされていないために、表紙を持ち上げると連続した本紙がひらひらと翻り、つむじかぜがぐるぐると回っているさまに似ていることから「旋風装」(旋風葉とも)と呼ばれる装丁方法である。
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ライセンスなど
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グループのオブジェクト
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Dai-Hannyakyo Vol.70
物理的特性
- 重量と数量
-
員数 1帖
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