紺紙金字一字蓮台法華経序品

『法華経』は、これを両手でいただくだけで功徳がある。が、声を発して読むことは、それにもまさる功徳であった。さらに、みずからそれを書写する功徳は、最大の善根としてたたえられていた。とりわけ、巻第四「法師品(ほっしほん)第十」の中に、写経成仏をたたえている。また、当時、罪ふかきものとされていた女性も、巻第五「提婆達多品(だいばだったほん)第十二」の説くところにしたがえば、女人成仏(にょにんじょうぶつ)が可能という。この理念が平安時代の貴族に熱狂的な法華経信仰をもたらし、結果、競って写経にいそしんだ。また、仏事供養を華麗にして、現世の極楽浄土さながらに荘厳することも功徳とみなされ、大いに流行した。それにしたがって写経もまた、美しく飾りたてられた。今日、装飾経と呼ばれる遺品は、いずれもこうした信仰生活の所産である。この一字蓮台経も、装飾経の一つである。金字の経文一字一字を、蓮台の上に安置する。截金(きりかね・金箔を薄く切って糊で貼る)で、蓮弁と円相をつくる。その中に、金泥で経文の文字をつらねる。金泥と金箔とは、含有物の差の変化。金泥の輝きが心なしかにぶいのは、中に銅をふくみ、その銹(さび)のなせるわざである。専門技師による精巧な一字宝塔蓮台経と比して稚拙にみえるのは、不馴れな供養者みずからが竹刀(金箔を扱うために竹の絶縁性を利用)で、微細な箔を置いたものであろう。平安時代の民衆の信仰生活を垣間見る思いである。見返し絵は、『法華経』の守護をつかさどる普賢菩薩像。経典本文の書風から、平安時代後期の遺品と考えられる。もとは一品経(『法華経』28品を各一巻ずつ結縁して制作された写経)であった。
オブジェクトの概要
ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
Keio Object Hub では、データのオープン化を進めるだけではなく、オープン・データを活用してどのような体験がデザインできるか、さまざまな試みを行っています。
オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Lotus Sutra with Lotus Pedestal Characters
物理的特性
- 重量と数量
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員数 1巻
来歴
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