銅製経筒(久安六年銘)
銅鋳製で、傘蓋作りの円筒形経筒。蓋の盛り上げの曲線が優美で、被せ蓋形式(印籠式に蓋と身が合わさる)につくる。筒の底部には縁をもうけ、安定感を増す。胴部に「妙法蓮華経一部八巻久安六年庚午十一月廿五日勧進僧神禾僧根力」の銘文が刻されている。平安朝特有の和様の書体である。形態から北九州地方の経塚からの出土と考えられるもの。藤原行成〈ふじわらのゆきなり・972-1027〉が打ち立てた和様の書の文化が、12世紀の半ばには地方に伝播していたことを知る貴重な遺品でもある。
[銘文] 如法書寫妙法蓮華経一部八巻〈久安六年庚午十一月廿五日/勧進僧神禾・僧根力〉
同じく九州出土と伝えられる本資料は、蓋部に笠形の被蓋形式をとり、別鋳で相輪形紐を頂き、筒身はやや細長い印象を受ける。一般に経筒は、時代が下るにつれて筒身が細く口径が小さくなっていくが、これは納められる経巻の種類・部数が減少していくことと軌を一にする。九州では一般に多部の経巻を埋納する際に1巻に巻き直すことが多くみられ、畿内のものと比較して細い筒身のものが多い。本資料も紀年銘「久安六年」と経塚造営隆盛期からやや時代が下る。納経された「妙法蓮華経一部八巻」の員数に比して口径が小ぶりであるのは、前述の事情が反映されているのだろう。なお経巻自体は伝世していない。
勧進僧神禾・僧根力の2名が経塚造営事業を差配したことが窺える本資料では、とりわけ、陰刻銘文の暢達ぶりに目を惹かれる。明瞭な点画で流々とした筆致で記された文字から、人々の浄土への憧憬と篤い信仰心が、これら優美な書体で表現され支えられていたことが知られるのである。(渡邊)
[参考文献]小田富士雄「九州の経塚」『仏教芸術』76号、1970年7月/村木二郎「近畿の経塚」『史林』81号、1998年3月
文字景 —— センチュリー赤尾コレクションの名品にみる文と象」展(2021.4 慶應義塾ミュージアム・コモンズ)図録 掲載
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グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Sutra Case (Cast in 1150)
物理的特性
- 重量と数量
-
員数 1点
来歴
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