柿本人麻呂蒔絵硯箱
柿本人麻呂(生没年不詳)作とされる和歌を絵画化した作品。『古今集』巻第9・羇旅歌所収の歌「ほのぼのとあかしの浦の朝霧に島隠れゆく舟をしぞ思ふ」を表現する。海景を行き交う千鳥がかわいらしい。金色の盛り上がった各モチーフは高蒔絵であらわし、岩の点苔は小さな方形の金属片を貼り付けた切金の技法を用いている。
人麻呂は後世に神格化され、崇拝の対象となった。歌会では上記の和歌と肖像画を飾ることで、歌道の上達を祈願したほどである。現代よりも歌を詠む行為が身近であった時代には、文房具の一種である硯箱に歌聖のモチーフを取り入れて、その霊験にあやかったのかもしれない。
箱内側には金泥で書き込みがあり、筆置きに「おぎのゑ」、また蓋裏に「よそにのみ見てややみなむかつらきやたかまの山のみねのから荻」と記している。和歌は『新古今集』巻第11・恋歌一収録のものと類似するが、第5句のみが異なる。(小松)
文字景 —— センチュリー赤尾コレクションの名品にみる文と象」展(2021.4 慶應義塾ミュージアム・コモンズ)図録 掲載
蓋表の図は、「ほのぼのとあかしの浦の朝霧に島隠れゆく舟をしぞ思ふ」という歌を表している。この歌は、『古今和歌集』(巻第九・羇旅歌)にはよみ人知らずの歌(左注に「ある人のいはく、柿本人麿が歌なり」とある)として収録されているのだが、元永元年〈1118〉6月16日、六条修理大夫こと藤原顕季〈ふじわらのあきすえ・1055-1123〉が自邸において人麿影供(ひとまろえいぐ・人麿の肖像を掲げ、香花・供物をそなえて開く歌会)を行った際、画賛にこの歌が書かれていたように、人麿の代表歌とみなされている。一方、蓋裏には「よそにのみ見てややみなん葛城や高間の山の嶺の白雲」の歌が記されている。これは『新古今和歌集』(巻第十一・恋歌一)によみ人知らずの歌として収められているものである。
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ライセンスなど
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グループのオブジェクト
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Writing Box with the Poet KAKINOMOTO no Hitomaro
物理的特性
- 重量と数量
-
員数 1合
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