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三十六歌仙図屏風(近衛信尹賛)(右隻)

Keio Object Hub
人物
年代
制作年 江戸時代初期(17世紀)
タイトル
サンジュウロッカセンズビョウブ(ウセキ)
寸法
156.5×354.1
材質・技法・形状
紙本着色
コレクション
所管
ミュージアム・コモンズ キャンパス 三田
資料番号
AW-CEN-001951-0001
ライセンス
CC BY 画像ライセンス
クレジット表記

慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

URL
基本分類
美術
AIタグ
茶色 繊維 美術 生命体

藤原公任〈ふじわらのきんとう・996-1041〉撰になる『三十六人撰』は、当時の秀歌の規範として貴族たちの文芸の座右に重んじられた。やがて、平安時代末期・12世紀になると、これら歌人の画像を描いてその代表歌1首を書き添えた歌仙絵が生まれた。後世、歌道の流行を歌仙信仰にともなって、絵巻形式の巻子本から、各歌仙ごと色紙に貼り込んだ色紙帖が考案された。いずれも、歌仙像は当時の名だたる絵師に、歌は能書の公卿に書写を依頼して制作されたものである。これは三十六歌仙を左右各18人の群像に描き分け6曲1双の屏風に仕立てたもの。歌仙図と和歌色紙を屏風に貼り交ぜたものはいくつか伝存するが、歌仙像を屏風に直に描いた上に和歌をも添書した遺例はきわめて珍しい。『三十六人撰』においては、柿本人麿を筆頭に、紀貫之・凡河内躬恒・伊勢……と続き、最後の36番目が中務となる。これを右・左に割り振って18人ずつに分け、人麿のグループを右隻に集めて画面左から順次配列、画像はすべて左向きに描いている。左隻には紀貫之から中務まで、画面右から配列する。1双の屏風を並べた時の画面効果をねらったものである。また、右隻の中央に斎宮女御〈さいぐうのにょうご=徽子女王・929-985〉を描くが、几帳を立てるばかりで、像主の絵姿を省略している。まことに大胆奇抜の構図である。歌仙中、最尊貴の斎宮女御に払う絵師の心情の発露というべきか。それらの歌仙像は下方に描かれ、上部の空間に近衛信尹〈このえのぶただ・1565-1614〉がそれぞれに対応する代表和歌をしたためる。信尹は桃山時代の公卿で、摂関家近衛家の当主。文禄元年〈1592〉、豊臣秀吉〈とよとみひでよし・1536-98〉の朝鮮出兵にみずからが総指揮をとるべく渡航従軍を企てたが失敗。同3年、義兄たる後陽成天皇〈ごようぜいてんのう・1571-1617〉の勅勘に触れ、薩摩国(鹿児島県)最南端、坊の津(ぼうのつ)に配流となった。後に帰洛し、還俗後、関白・氏長者さらには准三宮となった。歌道・書道に秀で、ことに書においては、近衛流(三藐院流)と称され、本阿弥光悦〈ほんあみこうえつ・1558-1637〉・松花堂昭乗〈しょうかどうしょうじょう・1584-1639〉とともに「寛永の三筆」の1人に挙げられ、不羈奔放の性格のままに、豪放自在、すこぶる個性的な書をかいた。この賛の書風もその典型である。縦横無尽の躍動的な健筆は信尹の真骨頂。墨の濃淡自在、連綿や墨継ぎ、一気呵成の運筆、眼にもとまらぬ筆跡の跡が、関白近衛信尹の生得の威厳を示してあまりある。歌仙図の白眉というにやぶさかでない。

[釈文]
右隻(右から)
平兼盛/かそふれはわか身につもるとし月を/をくりむかふとなに急くらん
大中臣能宣朝臣/千年まてかきれる松もけふよりは/君にひかれてよろつ代や経ん
小大君/岩はしのよるの契りもたえぬへし/あくるわひしきかつらきの神
坂上是則/みよし野の山のしら雪つもるらし/ふる郷さむくなりまさる也
藤原興風/たれをかもしる人にせん高砂の/松もむかしの友ならなくに
藤原清正/ねのひしにしめつる野へのひめこ松/ひかてやちよのかけをまたまし
源宗于朝臣/ときはなる松のみとりも春くれは/いまひとしほのいろまさりけり
藤原敏行朝臣/秋来ぬとめにはさやかにみえねとも/風の音にそおとろかれぬる
斎宮女御/ことの音にみねの松風かよふらし/いつれのをよりしらへそめけん
源公忠朝臣/行やらて山路くらしつ郭公/いま一こゑのきかまほしさに
中納言敦忠/あひみての後のこゝろにくらふれは/むかしは物をおもはさりけり
中納言兼輔/人のおやの心はやみにあらねとも/子を思ふみちにまよひぬるかな
猿丸太夫/をちこちのたつきもしらぬ山なかに/おほつかなくもよふことりかな
素性法師/いまこんといひしはかりになかつきの/あり明の月を待出つるかな
在原業平朝臣/世間にたえてさくらのなかりせは/春の心はのとけからまし
中納言家持/さをしかの朝たつ小野の秋はきに/たまと見るまてをけるしら露
凢河内躬恒/我やとの花見かてらに来る人は/ちりなん後そこひしかるへき
柿本人丸/ほの〳〵とあかしの浦の朝霧に/しまかくれ行舟をしそ思ふ
左隻(右から)
紀貫之/櫻ちる木のした風はさむからて/空に知れぬ雪をふりける
伊勢/三輪の山いかに待みん年ふとも/たつぬる人もあらしとおもへは
山邊赤人/わかの浦にしほみちくれはかたをなみ/芦辺をさしてたつ鳴渡る
僧正遍照/すゑのつゆもとの雫や世中の/をくれ先たつためしなるらむ
紀友則/夕されはさほの河原の川風に/ともまよして千とり鳴也
小野小町/色みえてうつろふ物は世中の人の/心の花にそ有ける
中納言朝忠/あふ事の絶てしなくは中〳〵に/人をも身をも恨さらまし
藤原高光/かくはかり経かたくみゆる世間に/うらやましくもすめる月かな
壬生忠岑/春たつといふはかりにやみよし野の/山もかすみて今朝は見ゆらむ
大中臣頼基朝臣/子日する野へに小松をひきつれて/かへる山路にうくひすそなく
源重之/よし野山みねのしら雪いつきえて/今朝は霞のたちかはるらん
源信明朝臣/こひしさはおなし心にあらすとも/こよひの月を君見さらめや
源順/水のおもにてる月なみをかそふれは/こよひそ秌のもなか也ける
清原元輔/秋の野の萩のにしきを我やとに/鹿のねなからうつしてしかな
藤原元真/年毎の春のわかれをあはれとも/人にをくるゝ人を知らん
藤原仲文/あり明の月の光を待ほとに/わか世のいたくふけにけるかな
壬生忠見/やかすとも草はもえなむ春日野を/たゝはるの日にまかせたらなん
中務/鶯の聲なかりせは雪消ぬ/山里いかて春をしらまし

オブジェクトの概要

年代
制作年 江戸時代初期(17世紀)
材質・技法・形状
156.5×354.1 紙本着色
コレクション
センチュリー赤尾コレクション
AIタグ
茶色 繊維 美術 生命体

ライセンスなど

資料番号
AW-CEN-001951-0001
ライセンス
CC BY
クレジット表記

慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

画像
ライセンス

所管・分類など

所管
ミュージアム・コモンズ
キャンパス 三田
URL
基本分類
美術

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OPEN DATADESIGN

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オブジェクトの詳細

物理的特性

重量と数量
員数 6曲1隻

物理的特性

重量と数量
員数 6曲1隻