黒川道祐筆詩懐紙
黒川道祐(1623-1691)は京都の医者黒川寿閑【くろかわじゅかん】を父に、堀杏庵(11)の娘を母に持つ。京都に住みながら広島藩に仕え、本業の医学のかたわら、『雍州府志【ようしゅうふし】』『日次紀事【ひなみきじ】』という京都の地理歴史・年中行事を記した大著を残した。羅山・鵞峰二代にわたって親交があり、斯道文庫には、道祐の依頼により鵞峰・梅洞・鳳岡および門人たちが合作した詩巻『〔静庵佳勝景境詩并序〕』(092/ト105/1)もある(7とともに『文人の書と書物』に収める)。
本作品は道祐自身の漢詩作品という珍しいもので、1と同様元旦試筆詩である。昨年は廃人になりかけた、という悲痛な第一句からは、延宝元年(1673)の火災で自宅を焼失してしまったという事件が連想されるが、その翌年の作かどうか明証はない。第四句は、『聯珠詩格【れんじゅしかく】』という唐宋詩のアンソロジーに載る吉師老【きっしろう】「放猿」詩の「放爾千山万水身」を踏まえ、野生の猿が自由に野山を駆けまわるようにはできないが、せめて自分の目で野山の花を見て自由な心を取り戻したい、と述べる。漢詩や和歌の懐紙としてよく用いられる、ごわごわした厚手の楮紙を料紙としているため、運筆がスムーズではないところがあるが、非常に素朴な書きぶりのなかに「人」「春」「眼」の右払いなど、かすかに羅山風の筆遣いを見せている。
箱書きは日本書道史研究者、陽明文庫主事の小笹喜三【おざさきぞう】。箱内に、昭和33年以文会(京都大学文学部同窓会)例会にて小笹が行った「江戸初期儒学家手蹟」展の一枚刷目録があり、本作品も出品されている。
【翻刻】元日 道祐粛拝」去歳将成一廃人、」寸心空負洛陽春、」如今幸帯看花眼、」須作千山万水身
(堀川貴司)「唐様前夜―林羅山とそのコミュニティ」展(2024.1 慶應義塾ミュージアム・コモンズ)図録 掲載
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Poem by KUROKAWA Dōyū
物理的特性
- 重量と数量
-
員数 1幅
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