源氏物語「末摘花」
「古筆家資料」中の1点で、後ろ遊紙に、「牡丹花肖柏真蹟」と鑑定した1877年の古筆了悦(1831–94)の奥書極があるが、肖柏筆ではない。室町時代には珍しくない綴葉装縦型の本で、薄手の萌葱色原表紙が残る。物語の定式の外題位置である表紙中央に題簽の剝落痕がある。和歌は初行のみ2字下げで、上句で改行し、歌末に地の文が続く一般的な形式。能筆とは言いがたい連歌師風の骨太な筆跡で、書き入れは一切ない。
肖柏筆とされる源氏には、『源氏物語大成』(中央公論社、1953–56年)の対校本となった天理図書館所蔵本があるが、書式や筆跡は異なっている。本文は共に定家本系統であるものの、細かな異同は多く、本書は「大成」底本の「大島本」に近いものとして注目される。錯簡の他に少なからぬ欠落も確認できるが、他の巻も含めて同筆の古筆切は見いだせていない。明治時代の古筆本家の活動を伝える資料としても貴重である。(佐々木)/ 『平家物語』でも屈指の古さを誇り、他に確認できない読み本系の本文を有し、しかも珍しい巻子装本の断簡として、近時注目されている古筆切が「長門切」(「平家切」とも)である。80葉程が報告されており、「古筆家資料」より3葉を追加できる。世尊寺行俊(?–1407)筆とされるものの、それより古い時期の寄合書で、少なくとも世尊寺流に属する3手が確認できる。本文は読み本系の『源平盛衰記』全48巻に比較的近く、それに拠ると、Aは巻第26「入道非直人附慈心坊得閻魔請事」、Bは同巻「入道得病附平家可亡夢事」、Cは巻第18「文覚流罪事」の部分だが、異同は少なくない。ABは同筆で、Cは異筆である。Cの右端近くに綴じ穴のような痕跡があって注意される。Dは『平家物語』ではない巻子装の仮名仏書の断簡であるが、ABCと異なる第3手に似ることもあって、紙背に「世尊寺行俊卿/巻物切平家物語」と記されている。江戸時代の鑑定のあり様を伝える興味深い事例であろう。(佐々木)
[参考文献]平藤幸「平家切から分かること─新出断簡紹介を通して 付長門切一覧」『軍記物語講座第二巻 無常の鐘声 平家物語』花鳥社、2020年
文字景 —— センチュリー赤尾コレクションの名品にみる文と象」展(2021.4 慶應義塾ミュージアム・コモンズ)図録 掲載
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ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- The Safflower Chapter of The Tale of Genji
- グループ
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古筆本家資料
グループ内番号 セコ束3-別置
物理的特性
- 重量と数量
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員数 1帖
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