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紹巴切(後撰集 巻第20)

Keio Object Hub
人物
年代
制作年 天福二年(1234) 鎌倉時代(13世紀)
タイトル
ジョウハギレ 20
寸法
22.5×14.0
材質・技法・形状
紙本墨書
コレクション
所管
斯道文庫 キャンパス 三田
資料番号
AW-CEN-000250-0000
ライセンス
CC BY 画像ライセンス
クレジット表記

慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

URL
基本分類
美術
AIタグ
手書き 作る 美術 書き込み 論文

藤原定家〈ふじわらのさだいえ・1162-1241〉自筆の『後撰和歌集』巻第二十巻頭の断簡。定家は晩年を古典の写本作業に捧げ、原本に忠実なその書写本は後世に多大な功績を残した。定家自筆の『後撰和歌集』は数本伝存するが、その最終書写本は、天福2年〈1234・定家73歳〉3月2日に書写され、国文学界では「天福本後撰集」と呼ばれている。歌道・茶の湯の世界において、藤原定家は特別の存在であった。その定家崇拝の風潮の中、定家自筆の歌集もつぎつぎに切断分割された。この天福2年書写本も早い時期に切(きれ)となった。それがこの紹巴切である。現在30数葉が確認される。切名は、その原本をかつて連歌師里村紹巴〈さとむらじょうは・1525-1602〉が伝えて所持していたことにちなむもの。この一幅が正真の紹巴遺愛の品であることを、付属の紹巴自筆の添状が証明している。この添状によれば、近衛稙家〈このえたねいえ・1503-66〉、三条西公条〈さんじょうにしきんえだ・1487-1563〉の極(きわめ)が付属していたといい、さらに越後の樋口実頼(伝未詳)なるものの懇望にまかせて譲与したという。なお、紹巴のむすめの子である昌琢(しょうたく。父は昌叱)の折紙も付属しており、伝来の由々しさを物語っている。いま、冷泉家時雨亭文庫に定家の正本と伝える「天福本後撰和歌集」(国宝)が伝存する。が、これは冒頭から冊子半ばに至る書写過程に、いかにもひ弱な故意的な震え筆が終始する。一群として伝存の「紹巴切」は、各自相応に定家の面目を発揮する書風を展開する。その正否をめぐる課題の一つを提示するのが、この一葉である。

[釈文]後撰和歌集巻第二十/慶賀/女八のみこ元良のみこのために四十賀し侍/けるにきくの花をかざしにおりて /藤原伊衡朝臣〈参議右兵衛督/天慶元年薨六十一〉/よろづ世の霜にもかれぬ白菊をうしろやすくもかざし/つるかな/典侍あきらけいこちゝの宰相のために賀し/〈右少弁春宮/大進〉侍けるに玄朝法師のもからきぬゝひてつかは/〈佐時敦忠卿男/母御匣殿別当〉したりければ 典侍あきらけいこ〈母御匣殿別当〉
[添状釈文]此一軸者相伝之次㐧/近衛殿太閤御所〈恵雲院殿〉/三条西殿右府〈称名院殿〉/御筆在之 爰越後/樋口但州実頼風雅執心/間奉与之者也 慶賀部/奥典侍之名也/天正十九年季春中旬/法橋紹巴(花押)
[添状読み下し文]
此の一軸は、相伝(そうでん)の次第、近衛殿太閤(たいこう)御所[恵雲院殿]、三条西殿右府[称名院殿]、御筆これ在り。爰(ここ)に越後の樋口但州(但馬守)実頼、風雅執心(ふうがしゅうしん)の間、これを与え奉る者なり。慶賀(けいが)の部、奥は典侍(ないしのすけ)の名なり。/天正十九年季春(きしゅん)(三月)中旬/法橋紹巴(花押)

 中世を代表する歌人学者である藤原定家(1162–1241)の筆跡は、味わい深い癖字でも有名で、茶道や古筆の世界で珍重された。定家筆切の代表的な存在が、この「紹巴切」である。『後撰集』巻第11以降のみの40葉以上が確認されているが、本切は巻第20の巻頭部分である点も貴重である。定家は10度以上『後撰集』を書写しており、この切は、筆跡や本文の特徴から、冷泉家時雨亭文庫蔵で国宝の天福二年(1234)三月二日本に先立つものと推測されている。
 名物としての「紹巴切」の名は、高名な連歌師里村紹巴(1525–1602)の所持に因むと考えられていたが、本切には天正十九年(1591)に直江兼続(1560–1619)弟の樋口(大国)実頼(1562–1622)に譲与した際の紹巴添状が備わり、由来を証明している。この他、紹巴の孫昌琢(1574–1636)・明治期の書家前田香雪(1841–1916)の鑑定書などを附す。紹巴状を合装した表具も見事である。慶應義塾出身の蔵書家呉文炳(1890–1981)旧蔵。(佐々木)
文字景 —— センチュリー赤尾コレクションの名品にみる文と象」展(2021.4 慶應義塾ミュージアム・コモンズ)図録 掲載

オブジェクトの概要

年代
制作年 天福二年(1234)
鎌倉時代(13世紀)
材質・技法・形状
22.5×14.0 紙本墨書
コレクション
センチュリー赤尾コレクション
AIタグ
手書き 作る 美術 書き込み 論文

ライセンスなど

資料番号
AW-CEN-000250-0000
ライセンス
CC BY
クレジット表記

慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション)

画像
ライセンス

所管・分類など

所管
斯道文庫
キャンパス 三田
URL
基本分類
美術

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オブジェクトの詳細

識別情報

タイトル(英題)
Chapter 20 of the Later Collection of Japanese Poems (Jōha Fragment)

物理的特性

重量と数量
員数 1幅(2枚)
付属品
*二重箱(外塗葵文入・内東博の貼切)・紐に「呉家蔵」の小札 *法橋昌啄の折紙1、前田高雪(明治)折紙1 天正十九年法橋紹巴の折紙合装 ・極書2通

来歴

*定家「後撰和歌集」最終書写本の天福二年(1234)書写本の断簡。 *室町末、連歌師里村紹巴1527-1602が伝え所持=紹巴切

識別情報

タイトル(英題)
Chapter 20 of the Later Collection of Japanese Poems (Jōha Fragment)

物理的特性

重量と数量
員数 1幅(2枚)
付属品
*二重箱(外塗葵文入・内東博の貼切)・紐に「呉家蔵」の小札 *法橋昌啄の折紙1、前田高雪(明治)折紙1 天正十九年法橋紹巴の折紙合装 ・極書2通

来歴

*定家「後撰和歌集」最終書写本の天福二年(1234)書写本の断簡。 *室町末、連歌師里村紹巴1527-1602が伝え所持=紹巴切