三迹(三跡)画像

日本書道史上の能書を称えて、「三筆(嵯峨天皇・空海・橘逸勢)」「三跡(小野道風・藤原佐理・藤原行成)」と称する習慣は、江戸時代の貝原益軒〈かいばらえきけん・1630-1714〉が『和漢名数』(1冊・延宝2年〈1674〉刊)に挙げたのが始まりである。が、それよりも以前、三跡の1人藤原行成〈ふじわらのゆきなり・972-1027〉の6代の孫・伊行〈これゆき・?-1175〉が、むすめ(建礼門院右京大夫〈けんれいもんいんうきょうのだいぶ・生没年未詳〉)のために書いた書道秘伝書『夜鶴庭訓抄(やかくていきんしょう)』には、弘法大師空海・天神菅原道真・小野道風を「三聖」と記録する。また、尊円親王〈そんえんしんのう・1298-1356〉の『入木抄』には「野跡(小野道風)・佐跡(藤原佐理)・権跡(藤原行成)、此三賢を末代の今にいたるまで、此道(書道)の規模(規範)としてこのむ」と記して、「三賢」の名称を用いている。本図は、左上方に、「筆峯三迹」(たくましい書を書く3人の名人)の題字を書いているので、3人の名筆家の画像であることを示している。衝立障子を背に、繧繝縁の上畳を置き、その上に錦の褥を敷いて、笏を手に坐すのは、嵯峨天皇である。その前に、香色の法服、五条袈裟をかけ、金銅の五鈷杵を手にするのが弘法大師空海〈くうかい・774-835〉。三筆の2人である。空海に向き合って描かれるのは、天神社に祀られ、学問の神・書道の神と崇敬された菅原道真〈すがわらのみちざね・845-903〉である。かれも平安時代初期から中期にかけて、能書として古くから謳われた人物である。この作品は、その描写様式から、鎌倉時代末期・14世紀初めのものと推定される。当時、この3人を「三迹(=跡)」として称していたことが知られ、ほかに類例のない希有の遺品として貴重な作品である。
オブジェクトの概要
ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
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オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Portrait of Three Great Calligraphers
物理的特性
- 付属品
- 黒塗箱 包裂一
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