キケロ『善と悪の究極について』(フィレンツェ、 1450–60年頃)

ヴェスプッチ旧蔵のキケロ写本
このヒューマニスト書体で書かれた写本は、キケロ(106 – 43 B.C.)の最晩年の哲学的対話篇で、倫理学の原理を扱った『善と悪の究極について』である。白のツタ模様を用いた巻頭ページの装飾は、15世紀後半にフィレンツェで活躍し、メディチ家のために多くの写本の装飾を手がけたフランチェスコ・ダントニオ・デル・ケリコ(Francesco d’Antonio del Cherico; d. 1484)の様式とされる。冒頭のイニシャル‘N’のなかにはキケロの横顔が描かれていて、ページ下部には所有者の紋章を描き入れるための空白が用意されている。
本写本を所有していたのはヒューマニストのジョルジョ・アントニオ・ヴェスプッチ (Giorgio Antonio Vespucci; c. 1434–1514)で、余白には本人の書き込みがところどころに見られる。ヴェスプッチは当時のフィレンツェを代表する古典学者で、甥のアメリゴ・ヴェスプッチ(1454–1512)も叔父の学識と蔵書から大いに影響を受けた。アメリゴは1497年から1504年にかけて4度新大陸への航海をしたとされ、アメリカが、アメリゴが用いていたラテン名Americus Vespuciusに基づいているのは周知の事実である。15世紀を代表するヒューマニストの自筆の書き込みがあるこの写本は、イタリア・ルネサンスの古典研究の姿を伝える一級資料に他ならない。(TM)
264 × 165 (175 × 100) mm. Parchment. Ff. 97. Written in formal humanistic hand. Illuminated border to fol. 1 in the early style of Francesco d’Antonio del Cherico. 18+1 210+1 38+1 42+1 54+1 62+1 78 82 98 102 119 122 136+1 142 158+1 162 174 182; fols 53 and 58 misbound.
オブジェクトの概要
ライセンスなど
所管・分類など
グループのオブジェクト
OPEN DATADESIGN
Keio Object Hub では、データのオープン化を進めるだけではなく、オープン・データを活用してどのような体験がデザインできるか、さまざまな試みを行っています。
オブジェクトの詳細
識別情報
- タイトル(英題)
- Cicero. De finibus bonorum et malorum. Florence, c. 1450–60.
Keio Object Hubでは、試験的な取り組みとして、AI(機械学習)を用いてキーワードを付与し、検索やフィルタリングに使用しています(AIサジェスト)。
初期ローンチ時は、Google Cloud の Vision APIを利用して、各オブジェクトの画像を解析し、自動的にキーワードを付与しています。